2020年最初の週末。もちろん初ブロカントに行きたいのだが、まだ友人ディーラーたちは休暇中である。かといって家でじっとしているのもつまらない。
12月から続くストライキの最中ではあるけれど、メトロの1番線は動いている。1番線なら、マレ地区のあたりに出られる。
というわけで、Saint-Paul駅まで行った。
せまい店内に物がごった返しているジャンク屋みたいな店で、天井近くに吊られている羽織りが気になって見せてもらう。
着てみたらサイズはちょうどいい、1980年代あたりのものかな。色あせたLevi’s501と、モカシン(持っていないが)か明るい色のウエスタンブーツと合わせたい。中にはヴィンテージのバンドTシャツを着る。
さらに道沿いの開いていた店を2軒まわって、そのうちの1軒には、私の好きな絵がまだ売れずに残っていることを確認した。2年前から欲しいと思っていつつ、かなり高いので買えていない絵だ。おそらく店主自身も手放すのが惜しいのだろうな。
最後の1軒では隅から隅までじっくり見て、最後にすごいのを発掘した。
ワイン商Nicolasの1938年版カタログだ。
今までに何冊か入手しているのだが、毎年趣向を凝らした作りでほんとうに素晴らしいのだ、昔のニコラのカタログは。
このたび見つけたのは、Galanisによる木版画の号である。
知らないアーティストだったので、Galanisについて調べてみた。
ギリシャ生まれのGalanisは21歳(1900年)でパリの美術学校に入り、まもなく新聞の風刺画やポスターデザインの仕事で世に知られるようになる。
1904年からは各種サロンに出品。彫刻家マイヨールや画家マティスらと親交を深め、ギリシャ出身者で初の前衛芸術家としてパリで認められた。
1914年にはフランス軍外人部隊に志願し、帰還後にフランス国籍を取得。
戦後は新聞雑誌の挿絵仕事をやめ、代わりに木版画と銅版画を製作するようになる。木版画では、複数の平行線を一度に彫る19世紀の挿絵技法を使った。
1920年代にはブラック、ピカソ、シャガール、デュフィらとの展覧会にも参加し、フランスではかなり有名な画家になっていた。1945年にアカデミー会員に任命。
とにかく絵の密度がすごい。色の配置も構図もタッチも素晴らしい。写真だとインクの厚みやコントラストの強さが半減してしまうのがくやしい。
グラフィックデザインはもちろんカッサンドル。また宝物が増えた。