土曜日に行った4区のヴォージュ広場周辺のブロカントを、翌日に再訪した。
前週末に9区で見かけたブレスレットがどうしても気になる。ここヴォージュ広場にもスタンドを出すと言っていたので土曜にも探したのに、なぜか見つけられなかったのだ。
スタンドを1個ずつちゃんと見て確認しながら進むと、あった、広場の南側の道沿いに。
プロの骨董商の彼女は私のことを覚えていて、すぐにブレスレットを見せてくれた。3点あった中から迷って、最も細いものを選ぶ(いちばん安かったし)。
とても満足して、最後に軍ものディーラーのTにあいさつだけして帰ろうと思いSaint-Paul駅前に行くと、今度は別の若いアフリカ系女性が同じタイプのブレスレットを売っている。
ほっそりした美人で、しかも接客のつかみが神がかっている。にっこり話しかけられたらつい引き寄せられて、訊かれたことには全て正直に答えてしまう。狐に化かされるというのはこういう感覚なのかもしれない、となんとなく思った。あまり出会わないタイプの、不思議で強力なコミュニケーション術を持った女性だ。ブレスレットよりも、どちらかというとこの技術が欲しいな。
私が身につけていた買いたてホヤホヤのブレスレットを「いい買い物だ」と褒めてくれて、彼女の売り物のブレスレットを見せてくれた。
すでに予算は使い果たしていたのに、完全に彼女のペースに飲まれているので、言われるがままに試着をする。
素敵だけれど、ない袖は振れないので購入はせず。
あいさつだけのつもりで寄ったTのスタンド。
1週間前の入荷時から気にはなっていた(が、けっこう高いし買わなかった)青いジャケットをTとアシスタントの女性がそろって着用中で、なんだか急にとても欲しくなってしまう。もう最小サイズしか残っていなくて、着てみたら思った以上によく似合うではないか。
コットン製フランネル地でできた、イタリア海軍のワークジャケット。タグには1994年製とある。デッドストックで、身頃の内側にはチョークで書かれた文字が残っている。さすがイタリア、ワークジャケットなのに妙に艶っぽいデザインである。
さて予想外の買い物をしてスタンドから出ると、さっきの話術巧みな女性とまた目が合う。
「もうね、早めのクリスマスプレゼントってことで、値引きしちゃう」と言われた価格は魅力的で、とうとう現金を下ろしに行ってしまった。
というわけで、ずっと買いたかったデザインのブレスレットが、いきなり2本も手に入ったのだった。
より細いのが最初に見つけた方。どちらも1920年代から1930年代あたりのものだ。