パリ12区(Av. Ledru Rollin)のブロカント | 2019/05

約半年ぶりの12区のブロカント。

ヴィンテージドレスのディーラーLのテントの梁にぶら下がる布に、またしても目が釘付けになった。彼女が気まぐれでときどき持ってくる巻物類の、センスが良すぎて困る。

KENZOの旧ロゴ(1980年代?)が端に控えめに入った帯ベルト。好みど真ん中の配色。
少し色褪せた黒いマキシ丈のコートにギュッとウエストマークするのとか、想像しただけで気絶しそうにカッコいいな。そんなコートは持っていないけれど。


紙ものディーラーのDは、古い版画を何枚か売りに出していた。

Librairie Firmin-Didot et Cieから1885年に発行された石版画本、Paris à travers les âges(パリの変遷、とでも意訳しておこう)の一部である。
完全版は有名古書店での取り扱いがあるものの、目玉が飛び出るお値段だった。

ノートルダム大聖堂のある風景が何枚かあったのだが、先の火災で燃えたのとは、またちがう形の尖塔がついた絵があるのに気づいた。

実はノートルダム大聖堂の尖塔が消えたのは、この2019年4月が初めてではないのだ。

1220年から1230年の間に作られたという初代の尖塔は、高所強風にさらされた5世紀の間に老朽化し、1786年には取り壊された。
そして、それから1859年の再建(Viollet-le-Ducの尖塔)まで70年ほど、大聖堂は尖塔のないままだった。

私の選んだのは1750年の姿とあるので、初代の尖塔だ!なんかツルッとして可愛いなと思って選んだ(先日燃えてしまった尖塔は、表面がギザギザしている)のだけれど、初代だったのか。

大聖堂に向かって左手、左岸側にはPont au Doubleという橋があるのだが、これが現在の橋とは似ても似つかぬ立派な姿。

屋根つきの回廊タイプだったのか、昔は。ちなみに現存の橋は4代目だそう。手前に2艘と奥に1艘、両岸に洗濯船の姿がある。

もう1枚(というか全部)欲しかったのだけれど予算が足りず、夫に買うようにそそのかしたのが、この絵。

1621年のシテ島の火災の様子で、燃えていて大変なんだけど、とてもよく描かれた綺麗な絵である。

逃げる人、火消し、見物人の描写が細かくて、ずっと眺めていられる。広重の版画を見いている時と似た感覚を覚える。

このPont au Change橋も今の形とはだいぶちがっていて、こちらは回廊ではなくて家屋のようだ。17世紀当時まで、宝石商と銀細工商と両替商たちがギュウギュウに店を構えていて、橋の上からは全くセーヌ川が見えない作りだった。橋の下も柱だらけだし、小さい船しか通れない。

ああ、じゃあこの火事で逃げ出している人々は、宝石商とか銀細工商とか両替商なのだな。
両替橋という名前の由来も、これでわかった。