珍しく晴れて気持ちの良い日だった、15区のメトロ高架下のブロカント。
ステンシル絵つけの小さなキャニスターを2個、そろいで見つける。
刻印はSaint-Amandで、製造時期はおそらく1920-1930年。
デザインの流行が、アール・ヌーヴォーからアール・デコに変わりつつある時期と見え、花の意匠が、少しためらいがちに単純化されている。
テキスタイル専門のあるスタンドで、奥に飾られていたブラウス2点に心を射抜かれた。
1着は、極細リネン糸の高級織地(Batisteという)で仕立てられた、19世紀の婦人用ブラウス。
恐ろしくていねいな仕事ぶりである。
貝ボタンも、形がいびつで愛らしい。
肩幅は40cmあるのに、腰がめちゃくちゃ細い、ウエスト周囲が50cmくらいしかない。さすがコルセット全盛期の女性服だ…
うちにある19世紀後半のトルソーはコルセット体型なので、ちゃんと下までボタンが留まる。
もう1着は、パステルグリーンのシルク地(少し張りもあるしオーガンジーかなと思ったが、ルーペで見ると、経糸2本に緯糸1本だ… 綾織りの模様は出ていないし、これは何という織り方?)に、黒いレースが手縫いでつけられた、1920年代のボウタイつきブラウス。
同じレースのあしらわれたシリーズで別色のスリップドレスもあったので、部屋着なのだろうな。
元の持ち主は舞台女優だったとか(その人の、元専属仕立人の伝手で入手したという)。
色の組み合わせが粋だ。
金具のサビのような小さなシミがあるのだが、店主の助言に従って、シミ抜きに挑戦する。
高かったけれど、もうこんな逸品には2度とめぐり会えないと思い、現金を下ろしに行った。
ファッションウィーク真っ最中なのに午後まで売れ残っていたとは、ブラウスの方も、私のところに来たかったにちがいない。
全スタンドを一巡した後、また同じスタンドに戻り、気になっていたのに値段を訊くのを忘れていた布を見せてもらう。
やはり思っていたとおり、19世紀のバスク地方の生地だった。
木製の長椅子に敷いた敷物か、テーブルセンターとして使われたものだという。
台所ふきんやバスタオルにしては大きさも形も妙だなと思っていたので、店主の説明に納得した。
藍染のライン上に白い織地が浮き出ているのは、何度も洗われたことによる色落ちだそう。ということは、私が今までに買ったバスクの19世紀の布も、洗えばいつか同じように織地が見えるようになるのかもしれない!それは楽しみだな。
ここの店主からは、古い布地の面白い話をたくさん聞かせてもらって、良い勉強になった。
このあと、もう1ヶ所ハシゴする。