パリ市内に面白そうなブロカントがないので、電車に1時間も揺られてやって来た、南郊外のブロカント。ここに来たのは約1年半ぶりだ。
恐ろしく暑い日だった上に最も気温が上がる時間帯で、着いて間もなく「なぜわざわざこんな遠い所まで1人で来たのだろう」などと思う。
先月手に入れたM38ジャケットに足りないボタンを地道に探しているのだが、あるスタンドで、シャンパーニュ瓶の木箱(1976年ヴィンテージだった)にどっさり入ったボタンを発見。
ベークライト製の焦げ茶色ボタンを見つけたので「これはきっとある!」と真剣に探し始めるものの、文字どおり山ほどもある。全部をチェックするのは大変である。
売り主が店じまいを始めたので、あわてて値段を訊くと、「箱ごと全部」の値段を言われた。
「数個でいいんだけど」
「1個でも箱ごとと同じ値段だよ、すごく高くつくよ。まあ好きにすればいいけど」
もう暑いし面倒だし、箱ごと全て引き取ることにした。
家でゆっくり探せば目的のボタンが見つかりそう、という淡い予感にすがる。
ただでさえ運行数の少ない日曜日の郊外線、さらに夏休みダイヤなので20分に1本しか電車がない。着いた時点で帰りのパリ行きの時刻は確認済み。
そろそろ引き上げて駅に向かおうと思っていたところ、趣味の良い工具類を並べるスタンドを見つける。
1930年代に学校教育(小学校か中学校)で使われていたという、木製メジャーカップ。使われた形跡がない新品。
きっと、備品棚から1度も出されなかったのだろうな。
大きい方から、Double Litre(2L) / Litre(1L) / Demi Litre(1/2L) / Double Décilitre(0,2L)。
書体がグーテンベルク書体のようで珍しい。もしかしたら、ドイツによる占領時代の物かも知れない。
口径部の真鍮の帯は「磨くとピカピカになるよ」と言われたけれど、いや、むしろこの鈍い色の方がいい。
入れ子になる。
BOISSELLERIE LEGER POITIERSの刻印。
少し調べたら、この木工製品製造業社のものらしい、1950年代発行の請求書を見つけた。
さて、暑い中を帰宅して早速ボタンを洗い始めたものの、その量の多さと汚れ具合に改めて驚愕。
計量したら2,8kgもある。ボタン1個は平均3gくらいとして、1000個近くも買ってしまったのか。
毎日少しずつ洗って乾かしてを7日繰り返し、やっと全てを洗い終えた!
上の画像には大きなボタンだけを写したけれど、直径5ミリくらいの極小の物もある。くるみボタンも、木製のボタンも、革のボタンも、ガラスボタンもある。
ワンピース用の留め具や、チャコペンシルのかけらまで混ざっていた。
で、あるだろうと楽観していたM38用のベークライトの焦げ茶色ボタン(直径24mmと17mm)は、結局見つからなかった!なんということ!
ベークライト製でかなり近い形で同じサイズで黒色、または、かなり近い焦げ茶色で1mm強大きい、というのは結構な数あるのに。1mmくらいの誤差なら見過ごせると思いかけるが、ボタンホールを通らないから困る。
幸いにもダブル・ブレストのジャケットなので、ボタンホールに関係ない側に、今回買った中で最も見た目が近いボタンを仮付けした。
涼しくなったらすぐにでも着たいのだ、あのM38を。