そうそう、年末にDoctolibアプリから取ってあった眼科の初診予約日時が、ちょうど警察署にいるであろう時間と重なるので、しかたなく予約を延期した。このときは新しい保険証がないと受診できないと思い込んでいたので、1ヶ月半後に。
スリ顛末その1はこちら↓
月曜の朝イチ目指して警察署に行ったら、中にはすでに5人も座っていた。彼らはどこから入ったんだろうか。秘密の会員専用入口とか、時間外受付とかがあんの?
お年寄りと付き添い男性(弁護士だったかも)、という2人組もいた。おじいさんが持ち家の1つを騙し取られたとかいう話をしているのが聞こえた。私の少しあとにやってきた若い女性はiPhoneを週末にひったくられたらしく、購入時の箱を持ってきてIMEI番号を書類に書き写していた。やっぱり冬休み開始時期で街がざわついていて、スリ窃盗稼業の書き入れ時だったんだ。
待合室で2時間ほど待って、やっと名前を呼ばれて個室へ入る。
大柄でにこやかな男性の警官が担当で、私が日本人だとわかると「日本に旅行したいと長年ずっと思ってるんだけど、コロナのせいで全然もう見通しが立たないですよ」と残念そう。よく見れば壁面には満開の桜の写真のポスターが貼ってある。フランス人は旅行ヴィザがないと日本に行けないからね、いつまで続くんだろうこの措置。そんなめんどくさい国には誰も観光に行くまいよ。
日本を好きな人に当たったのは少しラッキーだった気がする。あと、前もって盗まれたものリストを作って印刷してあったのは正解だったようだ。たまに内容について質問(財布のブランドが何かを訊かれた。調書ってそういうことも書くのね)する以外は、ずっと無言でキーボードを叩いて書き写している。
印刷された盗難届にサインする前に読み返す際に、私自身がリスト内の事件の時刻を1時間あとに打ちまちがえていたことに気づいた(よっぽど動揺していたんだわリスト作った時)。もう警察のハンコも押してある書類だし訂正してプリントし直すのかなと思ったら、担当者の男性はボールペンでチャチャッと正しい時刻を上書きした。「えっこれって(公的書類やで?)」「大丈夫です問題ない」と言われ、まあ警察の人が大丈夫って言うし、いいのか、と去った。あとの人もつかえてるし。
帰宅してすぐに書類をスキャンして、各種手続きを開始。具体的にどういう手続きだったかを以下に記録していくよ!長いよ!
1)滞在許可証
まずは10年滞在許可証(IDカード)。これが命の次に大事なやつ、ないとなんもできない。
事件が起きた日に即ググってわりと上位に出てきたのが、内務省管轄のサイト。
https://www.service-public.fr/particuliers/vosdroits/F21032
この最初のページで自分のケースをチェックしていくと、必要書類リストが出てきた。
警察署発行の盗難届の控え、再発行してほしいIDのコピー(もしあれば)、パスポート、出生証明書(戸籍謄本)、結婚証明書、扶養子女がある場合はその出生証明書、6ヶ月以内に発行の居住地証明(こういうのに備えてインターネット契約は私の名前でしてあるのでそれでOK)、公式書類用の証明写真3枚、収入印紙(これは新カード受け取りの時に提出する)
ぎゃー、戸籍謄本が必要なのか、結婚式の時に使ったのならあるけど、発行日が古そうだな… まあとりあえず提出してみてから反応を見ようか、急いでるし。結婚証明書…は市役所にメールで頼めば割と早かったはず、即メール(夫がやってくれた)。
トップページで自分のシチュエーション(どういう滞在身分か、どこで失くしたかとか)をチェックしたら、それ用の再発行手続きのページが開くのだけれど、これは順番に書類をアップロードしていかないと次に進めないシステムか。結婚証明書がないのでそこで止まってしまうだろう(これが届くまで待つこと9日。ちょうど冬休み期間な上にまだテレワーク推奨時期で、人が少なかったのだと思う。以前は4-5日で届いた記憶)けど、どうせ1度では上手くいかないだろうから、練習がてら行けるページまで行ってみる。
アカウントを作成(これがまた割とややこしかった、でも何度目かのトライでなんとかなった)してログインして、Je déclare un changement de situationのボタンを押す。開いたページの2行目の選択肢に「盗難紛失破損のケース」があるのでそれをクリックすると、手続きが始まった。
パスポートや盗られたIDのコピーなどの必要書類をPDFでアップロードしていく。書類に不備があれば(ファイルサイズとか型式とか)すぐにダメ出しをしてくれる。
鬼門だったのは、なんと証明写真である。
最寄りの駅に証明写真ボックスPhotomatonがある。Ephotoという項目を選択しなければ申請がネット上で完結できないのを知り、Ephotoのボタンを押す。滞在許可証用と、運転免許証用は違うのでそれぞれ撮った。ストレスですごい無愛想で不健康な写りになったけど、もうどうでもいい。
さて、いざ証明写真Ephotoの下に印字されている個別番号(これがあるので、写真のスキャンを送るとかじゃなくて、撮影した瞬間に行政側に送る画像データが生成される仕組みらしい)を入力すると、「有効な番号ではありません」と出る。なんでや!試しに、同時に撮ってあった運転免許証用のEphotoの番号を入れてみたら、やっぱり「無効です」と言われる。そりゃそうよね、運転免許証用だもん。で、改めて滞在許可証用の写真を見ると、「運転免許証用」と書いてあるではないか!
なんで?私が疲れててまちがえたのかな、押すべきボタンを?
夫から小銭を巻き上げ、もう1度同じボックスに戻って撮る。ぜっっっっったいに右側の「滞在許可証ボタン」を押した、スクリーンを凝視して何度も確認したよ。で、出てきた写真を見ると、「運転免許証用」って印字が!!!このマシン壊れとるやないか!!
頭が沸騰して気絶しそうになりながら、こりゃあかんわと思い電車に乗って、隣町の駅構内のPhotomatonへ行くことにする。なんかもうズバッと場所を変えないと、正しい写真が撮れない気がしていた。
隣町の駅構内のボックスに入り、いざ正面を見れば、全く同じマシンで同じメニューの写真を撮ろうとしているのに、2ユーロも高い。そうだった、この街はブルジョワの住宅街、城下町だったわ…
背に腹は変えられないので観念して、小銭入れの中を確認してからGO。
価格に動揺したせいか、お金を入れるときに小銭の種類をまちがえ、お釣りが出ないマシンだから最初からやり直そうと返金ボタンを押すと、次にお金を入れる時には1ユーロ以下の小銭は受け付けませんとかいう警告が出た。そういうのは先に言ってくれ!!!ほんとに!!!
結局ずいぶんと多めに払う羽目になり(最寄駅のマシンなら6ユーロのところを、隣町マシンは8ユーロ設定で、私の小銭入れまちがいドジのせいで10ユーロ払う羽目に。さて、私の小銭入れにはどんな種類の小銭が何枚入っていたでしょうか鶴亀算)、カードがないと本当に何もかも不便だと思った。
出てきたのはめでたく滞在許可証用のEphotoで、帰宅してサイトで番号を入力したらちゃんと受理された。ふー。
この最初のドタバタ手続き開始日から9日後の2月28日。晴れて結婚証明書も届いたことだし、スキャンしてPDFを準備。ところが、この書類をアップロードしろと言われることがなかった、最後まで…要らんのかい💢ならリストに書かないでよ!!なんなら戸籍謄本も要らなかった。
これがもしも来年更新手続き、とかだったら結婚証明書も必要だったのかもしれない。私は10年滞在許可証の1年分しか消費していないタイミングでの再発行申請なので、要らなかったのかも??
紆余曲折ありながらも申請手続きの最後のページまで行くと、「確かに再発行願いを受け付けました」と出る。瞬時に届いた受付確認メールには、顔写真入りの再発行申請受理証明書PDFが添付されていて、「これは単なる受理証明書であり、シェンゲン圏外に出ることはできません」と書かれている。とにかく翌日から、警察への盗難届と一緒に携帯することに。
あまりに呆気なく受理メールが来たので、本当にこの手続きで合っているのか不安になり(ここはフランスだし)、いちおう県庁の移民課にもメールで「盗難されたのですが、どう手続きすればいいかを教えてください」と送ったのだが、最後までなんの返事もなかった(ちなみに10年滞在許可証の更新申込みの時は1週間でちゃんと返事が来ている。私が内務省のサイトから手続きしたのが向こうもわかっていて、返信はいらぬとクールにスルーされたのだろう)。
約3週間後に、例の内務省サイトから自動メールが届いた。アカウントにサインインしてファイルを受け取れ、と書かれている。見に行くと、仮滞在許可証PDFがあったのでダウンロード。これでシェンゲン圏外にも出られるという、正式な書類である。なかなかやるやん、申し込みから3週間で仮許可証が出るとは。
そのまた3週間後、今度は「あなたの滞在許可証が準備できたので受け取り日時の予約をするように。225ユーロの収入印紙が必要ですので事前の購入を推奨」との連絡がSMSで届く。はやっ!!!もうできたのか!コロナ前は県庁に直接申請に行って3ヶ月はかかったというのに、6週間でできたのか、すごいな。
最後の難関は、収入印紙。225ユーロ也。これも行政の専用サイトで買う。たばこ屋でも買えるけれど、サイトで買ってプリントする方がよっぽど早いし確実で、もしもまちがえたり使わなかったりした場合には同サイトで払い戻しができる。
https://timbres.impots.gouv.fr/pages/achat/choixSeries.jsp
1年前に10年滞在許可証更新で225ユーロ払ったばかりなのに…(涙)
県庁にもらったSMSから指定の予約リンクに飛ぶと、3分刻みで予約が取れる。工場みたいだ。そして、PCからとiPhoneからとで予約時間がずれている、なぜ揃わないのだろう。そういう欠陥のあるシステムなんだろうか。とにかく、経済的にまだ少しは余裕のありそうな月末ギリギリを狙って予約を入れた。
予約当日。指定時刻には30分ほど余裕を持って県庁前に着き、鉄扉の前で少し待った。予約日時を証明するメールの写しを見せると、女性の警官が持ち物チェックをする。建物前には20人ほどアフリカ系の人々が並んでいたので、その後ろに並ぶのかと思ってビビったら、予約のある人は直接入館してください、と言われた。
メールで受け取った予約QRコードを受付でスキャンするのだと思っていたら、口頭で名前を訊かれて、手書きでリストに印をつけていた。こういうところはアナログのままなのか、もはやシステムの目指す先がよくわからない。
外国人滞在者用フロアに着いてすぐにお手洗いに行き、指定された窓口のなるべく近くで座って待つ。番号札とか掲示板はおろかマイクもないので、呼び出しは受付の人の地声である。めっちゃ注意して耳を澄まさないと聞き漏らすし、自分の姓名が正確に発音してもらえるとは限らないので(外国人の名前って読むの難しいよね)全神経を耳に集中する。
途中で3人ほど、点呼に答えなかった人々はスルーされ、どんどん順番が繰り上がる。かくして私の名前が呼ばれた時には、予約時間の15分前だった。早くに受付に出頭すると、すでにスタンバイだとみなされるのね、予約時間前であっても。爆速でお手洗いに行っておいてよかった。
2)保険証 Carte Vitale
これは最も簡単だったし早かった。しかも保険証がないと医者にかかれないと思い込んで焦っていたが、よく考えたら証明書をダウンロードしてプリントすれば問題ないんだった。
Ameli.frのサイトのアカウントにログインして、下記のリンクから「盗難紛失」を選ぶだけである。顔写真はPhotomatonじゃなくてもよくて、スキャンしてデジタルデータにすればいい。
ただしこのサイトは運営システムに難があるようで。ネットで手続きした2週間後くらいに、封書が届いた。「保険証の盗難紛失届を受理しましたが、再発行手続きには、顔写真が必要ですので同封の封筒に入れて郵送してください。もしもサイト上で手続きを行なった場合は、この通知は無視して構いません」とな。もう、サイトで全部やりましたよ、とログインして確認すると、「手続き中案件」の項目には何も入っていない!!なぜだ!バグって受理されなかったのか?試しに再び盗難届ボタンを押してみたが、特になにも起こらず、手続き中案件も相変わらず空である(押せば「1件申請中」とかになるのかと思ったので試した)。
しかたないので言われたとおりに封書に写真を入れて郵送する。デジタルで済ませたかったよ… と思いつつポストに投函し、帰宅したら夫が、「セキュリテ・ソシアルから手紙が来てるよ」と。受け取ると、なにやら硬い… 新しい保険カードやん!じゃあもうサイトで申請した分はとっくにできて郵送済みだったのか!じゃあ郵送済みとかって書いてくれ!
2枚も保険証は要らないので、Ameli.frのアカウントからメッセージを送る。「封書が来たのでサイトからの申し込みが不受理だったのだと思い書類を送ってしまいましたが、投函直後に新カードを受け取ったので、私が改めて送った封書は無視してください」と。返事どころか読まれた形跡もなく、2枚目のカードが1週間経たずに届いた。
そしてなんと、さらに1週間後に3枚目が届く。試しに押したあのボタンの分だこれは… なんという税金の無駄遣いだ、メールさえ見てくれれば、またはアカウント内の「進行中案件」さえ正しい表示であれば、余分な2枚は送って来ずに済んだのに… ロジックでは最新版のを使うしかない(だって失くしたっていうアクションを起こしたのは私だし)ので、最初に受け取った2枚は破棄。
手続きさえスムーズなら、1週間で新カードが届くので、これが一番早い。2001年ごろには生粋のフランス人でさえ再発行に半年待ちだったと聞いたから、それに比べりゃずいぶん早くなったもんだけど、まだまだ改善点あるよね。
3)運転免許証
これもわりとスムーズで明快だった。
行政の管理するサイトから、ボタンを押して書類をアップロードしていくだけ。
顔写真はPhotomatonのEphotoで免許証用を準備してあったのでそれをアップロード。警察署では、盗難届と別に免許証用書類を発行してくれたので、素直にそれを使った。あとは元の免許証のスキャン、身分証(盗られたけどコピーはある)とか居住地証明(納税書類が確実と思ってそれにした)とかのPDFが必要。再発行費用は25ユーロで、カードで払った。
申請から18日ほどで新カードが到着。早いね。
これを機に免許証アカウントを作ったので、自分の減点具合とかをオンラインでチェック可能に。まあ運転しないので減点もされないのだが。運転しないのにダラダラ持ち歩いていたのが、そもそも良くない。家に置いときゃ盗られないんだ。
4)その他もろもろ
3月上旬に友人宅でランチをしつつ身の上話をしていたら、夫が「警察から封書が来てるけど、いま開けた方がいい?」とSMSを送ってきた。すぐに開封して撮影してもらい、画像を見ると、私のカードケースが見つかった「かもしれない」という文面。
夕方に帰宅してすぐに実物を読み、この手紙が警察署管轄の遺失物届所から来たものだとわかった。オレンジ色のレザー製で、Gerogio Fedonの刻印があるケース。宛先にアパートの番号まで細かく書いてあるので、これは中に入っていた滞在許可証を参考にしているとしか思えない。私のIDカード、もしや戻ってくるんだろうか。手紙にはそのオブジェの写真を確認できるURLリンクが書いてあったので、PCからアクセス。初代スマホで撮ったのかなと思うような低い解像度の小さい画像だが、これは紛れもなく私のカードケースだ。
事務所に直接取りに行くことはできなかった(コロナ中だし)ので、事務手続き手数料とクロノポスト配送料を合計で14ユーロだったか支払い、翌々日には郵便局に取りに行った。滞在許可証をはじめ中身はすべて健在で、あらゆる会員カード類が戻ったことになる。とはいえ、共済保険証はすでに新しいのを発行してもらっていたし、洋服修理の半券はなくても引き取れていた(顔馴染みの修理屋さんなので)のだった。
滞在許可証は盗難届を出した瞬間から無効で、これを使って国外移動はできないので新しいものを申請するように、と書面には書かれていた(国外移動とかするとインターポールにも連絡がいくらしいよ!)。が、自分のIDがどっかをフラフラ漂っているよりは、本人の元に戻ってきてくれた方が断然安心ではある。しかもこれを使って郵便局に小包を取りに行くことくらいはできて、非常に助かる。この旧カードは新滞在許可証受け取りの時に、事情を話して提出して破棄してもらった。
プロのスリは純粋に現金が目当てで、その他の鍵やらカード類にはノータッチですぐに捨ててしまうという話は聞く。他人のカードを使ったら防犯カメラに映るし、鍵で自宅を強盗しに行っても足がつくし、ひったくりなんてもってのほか(ひったくりはだいたい素人ハイティーンのスリ集団に多い)。
おそらく私の諸々も駅の中で捨てられて、カードケースは親切な誰かが見つけて駅に届けてくれて、遺失物届所にたどり着いたんだろう。警察の盗難届が遺失物届所のデータベースとダイレクトに繋がっているのだね。最後まで出て来なかったのは自宅の鍵類と、メトロの定期券と無印良品のポーチ、そしてお財布(バレン○○ガの 涙)、である。お財布はとても可愛がっていたので、せめて新しい持ち主に大事にしてもらっていれば良いのだが。
次回につづく。