パリ15区(Av. de Breteuil)のブロカント | 2022/01

遠いのでなかなか行くことがない15区のブロカントを、ひさしぶりに訪問した。
以前にも来たことはあるのだけれど、だだっ広いわりには魅力的なスタンドが少なくて、何も買わずに帰ったのを覚えている。

駅に近い入り口から反時計回りに適当に見ていく。この日はおそろしく寒かった(1月の最終週)。

何度か買い物をしたことのある男性のスタンドで、すてきな木製のスプーンを見つけた。

ブルターニュ地方Bigoudenの婚礼用スプーン

手彫りで細かな模様が施されていて、折りたたみ式。ほぼ予想どおりの価格だったし、折りたたみとかそういう要素に弱い私が、買わないわけがない。

ブルターニュ地方のBigoudenのもので、結婚式のスプーンだと売主は言う。1940年代とかその辺りでは、とのこと。

てっきり結婚の時に家族や友人から新郎新婦に贈られるスプーンなのかなと思って調べたら、古くは男性が意中の女性に結婚を申し込むときに、工夫を凝らして手彫りして贈った物だそうだ。これからずっと2人でいっしょに食事をしたいです、という意思表示だね。女性はOKならスプーンを受け取って、婚約成立。なんだかおとぎ話のようでステキだ。

そしてブルトン人の結婚式はそれはそれは壮大で、各地に住む全ての親戚と友人たちが招待され、最も盛大なものでは3日間の披露宴で2100人(!)が集うこともあったとか。ただしそんな大量のカトラリーは誰も持っていないし、今みたいに使い捨ての商品はないし、レンタル業もない。なので招待者たちは自分の折り畳みスプーンを持ってはるばる旅をした、という。

まるで競い合うようにそれぞれ美しい模様を彫られた木のスプーンが、一同に集まって食卓で使われるのである。なんと楽しい光景だろう、そりゃデザインに創意工夫を凝らして真剣に彫る気持ちもわかる。そうか、結婚の申し込みで贈られたスプーンは、将来だれかの結婚式に呼ばれたときの晴れの日用スプーンになっていくんだな、きっと。