会うと私の目尻を下げ心拍数を上げる麗しいヴィンテージ服ディーラーKが、彼女の仲良しディーラーJのショールームで冬のセールをするという。
かねてより、パリのディーラーたちの中でもJのセールはずば抜けて面白いと感じていた。そこにさらにKも加わるとなれば、馳せ参じるしかなかろう。
さっそく訪問可能な日時を予約する… 正しくは、最初の告知を私が見逃したのを察したJが、わざわざ個人的にメッセージをくれたので、おかげで予約できたのだった。Jの気配りの細やかさはダントツである。
さて、訪問が久しぶりすぎて(ほぼ1年ぶりでは?)、なんとなくエレベーターで最上階まで行ってしまう。あれ?なんかドアの様子に見覚えがないし、こんなに通路が奥まで凹んでたっけ?どう考えてもフロアまちがいである。
何階だっけ…と昔のやり取りメッセージを廊下で掘り返して見つけ、やっと正しいであろう扉の前に着く。ちょうど中からKの声が聞こえたので確信を持ってドアをノック、めでたく迎えてもらえたのであった。
朝からすごい勢いで売れたらしく、「ごめんねもうあんまりいいの残ってないかも」と2人に言われた。最高価格で50ユーロのセールだし、そりゃ飛ぶように売れるだろう。とりあえず端から見ていく。
Kのラックで素敵なワンピースを見つけた。
1980年代後半あたりのGuy Laroche Diffusionレーベル。
こんなモチーフの生地、私が見逃すわけがない。
おまけに大好物のコウモリ袖に長めの丈、背中の中央にボタン。共布のベルトでウエストマークもできる、最高!そして私が来るまでは誰も見向きもしなかったらしい、なぜだ。
帰宅して洗濯し、アイロンがけの時になんだかザラザラするなと思ったら、肩パッドのポリウレタンが劣化してレンガ色の粉に変身している。もう80年代あるあるなのですっかり慣れて、驚かない。
裾脇の引きつれ穴を1つ修理してから再度洗濯し、アイロンがけの時にまだ粉が出る。しつこいな!ということで掃除機で吸った(最初からこうすればよかった)。
するとこんどは、襟の辺りにも大きめの穴があるのを発見。柄物ってこういう欠点が見えづらいよね。修理の手はかかったけれど、めちゃくちゃ安かったので全然問題ない。
Jのセール用ラックでは欲しいものが見つからず。通常価格のショールーム部分も見ていいかと尋ねるとOKと言ってくれたので、そちらを見る。そこで見つけたのが、1872年設立の寝台列車であるLa Compagnie internationale des wagons-lits (CWL)のためにCarvenがデザインした、制服ブラウス。
航空会社とか鉄道会社の制服が好きで集めている身としては、これは放っておけない。
上質のポリエステル生地に、列車のダイヤみたいな幾何学模様がプリントされている。
制服なので動きやすいようにゆったりめの形で、なるべく引っ掛かりがないように比翼ボタンが採用され、襟は優しい雰囲気の丸襟。1980年代前半あたりの品物かなと推測している。
Jの通常ショールームから選んだ2着目は、Saint Laurent rive gaucheのスカート。
このアナーキーなバイカラー!元はもっと真っ赤だったと思うんだが、洗濯したら色落ちしてピンクっぽくなった。
1970年第終盤から1980年代はじめあたりのコレクションかな。
デザインは大胆なのに、ちゃんとサイドに大きめのポケットがついていたりするのが生真面目でいい。
昔から張り切ってセールに行っては、セール除外品とか季節外れのキャリー品とかを買うタイプではあるのだけれど、今回もまたやってしまった。後悔はない。