パリ14区(Bd. du Montparnasse)のブロカント | 2021/12

肌寒い湿った12月上旬の週末に、4ヶ月半ぶりの14区のブロカントに行った(この日はこれしか面白そうなのがなかった記憶)。

軍ものディーラーGのところで、迷彩柄のウィンドブレーカーが目に留まる。

Late 1960s? K-Way camo

お、なんとこれは、K-Way(カウェイ、とフランス人は呼ぶ)ではないか!

ところでフランス人はティッシュペーパーのことを「クリネックス」、セロテープのことを「スコッチ」、などと有名ブランドの固有名詞で呼ぶことが多いのだけれど(たとえ話題にしているのが別メーカーのものであっても。まあ日本でもアイラッシュカーラーを「ビューラー」とか、食品用ラップを「サランラップ」とか言う例もあるよね。プリプリのソーセージを「シャウエッセン」とか)、ウィンドブレーカーを「K-Way」と呼ぶ人もいまだにいる、特に中年以降の層は。

K-Wayは1965年創業。
ブランド名「K-Way」は、来たるべきアメリカン・カジュアルファッション流行を意識して考えられたという。なので、フランス人の中にもK-Wayをイギリスかどっかのブランドだと思い込んでいる人がいる、夫もそうだった。当初のブランディングとしては大成功だ。

1980年にはソフィー・マルソーが、La Boum(1980)劇中で着用して人気にさらに火が付いた。
当時のティーンエイジャーはみんな持っていたらしく、懐かしそうに語る人も多い。

1992年にアルベールヴィル冬季オリンピックでフランスチームにユニフォーム提供をし、大絶頂の同じ年に、自社工場を火災で失う。
創業時からの貴重な製品アーカイヴも消失したというから、本当に不運で気の毒だ。

2004年にイタリア企業のBasic NetがK-Wayを買収しブランドを復活させ、今日に至る。パリのマレ地区にも販売店があるし、着ている人をよく見かけるようになったのはこういう訳だったのか。

ところで私の見つけたK-Wayは、どうやらけっこう古い様子。Gは1970年代後半だろうと言うけれど、ネットで検索して1970-1980年代の他の個体と比べたら、このタグのデザインはもう少し古い印象。

生地組成もポリアミド74%とポリウレタン26%の混合で、素材表記のフォントがGill Sansっぽい(70年代のタグには別のフォント)し、タグ自体の素材も古い。

これ、ブランド創設初期の品物かもしれないなと思っている。1968年とかそれくらい?

ジッパーはPrestil製。1924年創業のフランスのジッパーメーカーで、1960年代まではフランス国内で業界トップを誇っていた。

1969年に日本のYKKが本格的な世界進出を開始して、その後は徐々にシェアを奪われていく。ああ、これは当時の工員さんたちには相当恨まれているだろうね… 2008年にフランス国内での製造拠点は閉鎖したもよう。

さて、K-Wayの真髄と言えば、このシステム。

右ポケットの中に折り畳んで、

腰に巻けるのだ。

1980年代、雨予報の日にはK-Wayを腰に巻いて登校する子供がたくさんいたという。

袖口のゴムは完全に風化して樹脂ペレットみたいになっていた(もう慣れているので見ても驚かない)ので付け替え、ほつれている箇所を縫い、擦り切れた部分にはダーニングをした。