買ったばかりの蛇ブレスレットを左手首に巻いて、そのまま10区の貸しギャラリーへ移動した。
友人知人ディーラー6人が結集しての合同ポップアップストアが始まるので、オープニングパーティーに顔を出すのを楽しみにしていたのだ。
おしゃれしての外出機会に2年近く飢えているので、雨なのに上等な服を着て、ヒールのある革靴を履いていった。
この道は何度も通っているはずなのに、こんなに大きなギャラリーがあったとは知らなかった。
横に長い造りで、赤と青がテーマのディーラー混成ラックがそれぞれ1本ずつあった他は、個人別にコーナーが設けられていた。
いつもどおり右端から順に見始める。
6人が50着近くずつ持ち寄っているので、なかなかの量だ。見応えあって楽しいけど。
オープニングパーティーが目的だし、この直前の週末に思いがけず高い買い物をしてしまったので、お財布の紐は固く締めてきた…つもりだった。のだが。
モンマルトルにショールームを持つJのラックで、なんだか素敵な生地が目に留まった。
引き出してみると、Thierry Muglerのタグ。すんばらしいカッティングのジャケットだ。
ちょうどひと月ほど前に、装飾美術館でのThierry Mugler展を見て、ますますジャケットが1着欲しいものだなあと思っていたところ。
まさかここで出会うとは思わず、動揺。着てみるだけ着てみるだけと自分にも周りにも言い聞かせて、着てみることに。きっとウエストのあたりでボタンが留まらないから買わずに済むだろう。
ところがどっこい、このジャケットは1990年代初期のもので、ウエストラインが1980年代ほどには絞られていないデザインだった。着られてしまったよ、まずいな…
いやでもすごく似合うし(自分で言うのもアレだけど)、これを逃すと後がないのでは!えいっ!ジャンピング・フロム・ザ・ステージ・オヴ・キヨミズ!
かくして私のところへやってきたミュグレーさん。肩も厳つすぎず、ニュールックっぽいとも言える。
無駄な線がひとつもない、完全な構成。未来の宇宙船クルーの服みたいだ。
ヴェルヴェット生地で包まれた楕円形のくるみボタンとか、良すぎてもう鼻血が出そう。
早く着たいなあ。上からコートを羽織らなくていい気温にならないかな…