パリ1区(Pl. du Louvre)のブロカント | 2021/08

2年ぶりの1区、ルーヴル美術館東側のブロカント。

砂埃がすごいので、ディーラーDとLとわれわれの間では“brocante poussiéreuse”と呼んでいる。うっかり黒い靴を履いていくと3秒でグレーになっちゃう。

8月上旬で、出店者が20にも満たないような小規模さ。
5分で端から端まで見終えて最後に、セーヌ河に一番近い場所にスタンドを構えていた紙ものディーラーDのところへ行く。

めずらしく書籍類をたくさん売り出すとの予告だったので、楽しみにしていた。

テーブルに無造作に積まれた本の山を端から見ていたら、見覚えのあるカタログがあるではないか。
ワイン商のNicolasの、古いカタログだ。

すでに何冊か所有しているのだけれど、まだ持っていないものばかりだ。ぜんぶ中身を見て、好きな画風のものを2冊選んだ。

ワイン商Nicolasのカタログ

左側の1冊は1958年発行で、テーマがSous le Signe du Soleil (Provence)とある。太陽の光に満ちたプロヴァンス地方のワインの特集。

画家の名はRoger Limouseで、エコール・ド・パリの一員だったそうだ。少しマティスやゴッホやゴーギャンを思わせる色彩に、力強い筆づかい。

このグリーンの鮮やかさに心を奪われた。マティスっぽい… もといフォーヴィスムっぽいなと思っていたら、やはりフォーヴィスムの最後の世代だという解説を見つけて納得。

南フランスの夏の強烈な太陽光を避けて木陰にいるときの、あの緑色の目眩のようなものが完璧に表現されている。

そして、1958年のカタログに1865年のワインがサラッと掲載されているの、なんかすごいな。さすがワインの国。90年以上前のミレジム。当時のフランス・フランの価値計算がめんどうなので放置するけれど、Haut-BrionとLafiteの4000フランがこのカタログでの最高値かな。

野で地面をモグモグするうさぎ。これも好きな絵。
右ページの仮装パーティーセットみたいな、サラッと軽い筆致の絵もいいな。

真夏の南フランスの家庭では昼からシャッターを閉めてしまうのだけれど(でないと家屋内が蒸し焼き状態になる、クーラーないし)、その薄暗い室内で、ソファーに横たわってまどろむ女性の姿を捉えた1枚。

あの独特の薄暗さと外の強烈な光線の対比を、黒を使わずに描き切っていてすごい。しばらく南仏に行っていないので寂しくなってきた。

グラフィックデザインはお馴染みAlfred Latourで、印刷所もいつものところ。

1969年ワイン商Nicolasカタログ

もう1冊は、1969年発行。テーマはle Paradis Terrestre(地上の楽園)。

画家はBernard Lorjouで、Expressionnisme(表現派)の絵だ。見たことある感じの絵だと思っていたら、めちゃくちゃ有名な画家だったのだね。

ページの4倍サイズのポスターつき。この、オデコの表現がすごい。
顔を隠してオデコの部分だけ切り取って拡大してもちゃんと、体温を持つオデコだって伝わるのだ(何を言っているんだろう私は)。

ねこ。たぶん画家自身がこういう顔つきだったんだと思う。

Alfred Latourは有名なグラフィックデザイナーだけれど、Jean Latourって誰だっけ?と思ったら、Alfredの次男だった!

父親が1964年に亡くなって、その後は息子のJeanが仕事を引き継いでいたのか。

このブロカントの後にやっと、16年の改装工事を終えて6月にオープンした老舗デパートSamaritaineに入れた。入口の長蛇の列を見て何度もあきらめたのだ、7月には。