1年半以上ぶりの20区。
パリのはしっこギリギリだし、どうせ小規模だろうと思っていたら、意外に出店者の多いブロカントだった。
見慣れない男性の営む衣類スタンドに入る。
ハンガー1本にコートが2枚重ねられていたりするようなぎゅうぎゅう詰めのラックを端から順に見ていくと、黒のシルクのコートがあった。防寒用のコートではないことは明らかな、薄くてエレガントな羽織りものだ。
現代のものでは(ちょっとアルマーニっぽくも見えた)と疑って内側のタグを探したら、これは古い。1950年代あたりだろうか。
タグにはCréation Couture Colifichetsとある。
Colifichetsは「小間物、装身具」という意味である。小間物デザイン仕立て屋、とでも訳しておこうか。
住所の41 Boulevard Haussmannは、オスマン大通りとラファイエット通りの交差点あたり、今まさにギャラリー・ラファイエットが鎮座する場所。ということは、ギャラリー・ラファイエット内の仕立て部門かな。
ギャラリー・ラファイエットの創立は1893年。
1894年1月にはラファイエット通り1番地に、70平方メートルの小間物店Aux Galerie Lafayetteが開店した。
当時は帽子や手袋がオシャレの要(洋服は高価で、そうそう新調できない)で、この小間物店でも帽子などの装身具が目玉商品だった。
1908年にはオスマン大通り沿いに店舗を拡張したとある。ならばそれ以後は「オスマン大通り41番地のギャラリー・ラファイエット」と名乗っているはずだ。
このコートはもしかして、1950年代どころか、1900年ごろの品物なのかもしれない。
よく見るとすべて手縫いで、表地と同じシルクの布を裏地に使い、袖は完全に袋状に作られている。ギャラリー・ラファイエットほどの大企業が、1950年代にもまだ手縫いで作業していたとは思えないし。
裾に汚れはあるけれど美品…と思って買ったのだけれど、帰宅して洗って乾かしたら、前裾の右下に小さな穴があることに気づいた。虫喰いではなくて、何か鋭利なものに引っ掛けたような感じ。
すでに絹糸は調達したので、これからじっくり向き合って修繕する。
ヴィンテージ服ディーラーLも予告どおり出店していた。
この週末に見つけたという寄木細工のタバコケースの蓋の仕組みに感心していたら、なんとプレゼントにもらってしまった。
表は牡丹と鳥。掛け軸によくありそうなモチーフだ。
金具を押すと蓋が勢いよく開いて、タバコを1本ずつ取り出せる。
タバコを収納する際には、奥の長辺の蓋をスライドさせて開ける。
裏面の樹の一部が剥がれているのだけれど、最初は気づかなかったくらいだ。なんだか広重とか北斎の絵に触発されたような絵だな。
1950年代とかその辺りのものらしい。