パリ8区(rue Tronchet)のブロカント | 2020/01

3ヶ月ちょっとぶりに行った、8区のブロカント。

紙ものディーラーDのスタンドで、魔法使いの銅版画と花の絵を買う。

銅版画のタイトルは「Les dames de Marigny chez le Sorcier Delor(魔法使いドゥロール宅でのマリニーのご婦人たち)」。

検索してみると、まったく同じ絵のポストカードが存在することがわかった。
場所はシャルル六世時代(1380-1422年)のヴァンセンヌ城の本丸だったようだ(そういえば同じ箱に入って売られていた他の版画も、ヴァンセンヌ城がらみだった)。

お城の、しかも本丸に魔法使いを住まわせていたのか。

シャルル六世は通り名が「気ちがい王」。12歳で王位につき、24歳までは健康で、女性たちにも人気のあるモテる王様だった。

24歳の8月5日に最初の発作で昏睡し、2日後に覚醒。5ヶ月後にまた発作が起き、その後はどんどん、意識がまともな状態でいる時間が少なくなっていく。

毒を盛られたというのが医師たちの最初の見立てだが、それにしてもあまりに頻繁に発作がやってくるので、とうとう、「魔法使いによる呪術のしわざにちがいない」ということになった。

魔術には魔術で対抗すべしと国中の白魔術師を召喚し、国王にかけられた呪いを祓う儀式が行われた。ちっとも効果がないので、罰として魔術師たちは八つ裂きにされたり火あぶりにされて殺される(気の毒…)。

しかし魔術よりも怖いのは、この発作にまみれた精神病の国王が、死ぬまでずっと王位にいたということだ。そりゃ国も傾く。ジャンヌ・ダルクの登場まで、フランスは斜陽まっしぐらだったのだ。

タイトルにある「マリニーのご婦人たち」というのは、もしや美男王フィリップ(テンプル騎士を虐殺して呪われた王)の右腕だったというEnguerrand de Marignyの孫世代の女性?

手前の女性が手に持っている人形が、シャルル六世の肖像に似ている気がする。「これに呪いをかけてくれ」という依頼の場面なんだろうか。それとも、呪いを外してもらうために来たんだろうか。

ところで何が気に入ってこの版画を買ったかというと、後ろの壁に飾られているガイコツが、ふわっとしてかわいいからである。


もう1点の買い物は、カラー4輪の絵。
なぜかはわからないけれど、目が離せなくなって、どうしても欲しくなった。

花の向きから見るに、花瓶に生けられた状態を見ながら描かれたもの。茎は描かずに、背景を潔く緑色に塗ってしまったのがとてもいい。

こういうのは簡単そうに見えて、なかなか描けないのだ。眺めているとインスピレーションが湧きそうな気がするので、デスクの前に貼るつもりで買った。紙の質から察するに、半世紀くらい前の作品かな。