ここのブロカントは好きで、ほぼ毎回、訪れている。
古いアーケード街の中、せまい通路の両側にテーブルがひしめき、レストランのテラス席は通常営業なので、歩くのに少々のコツと忍耐が必要。
1年半ほど前に、アルミ製の指輪を買った記憶のあるスタンド(セミプロっぽい感じ)で、古い印刷物が売りに出されていた。
どれも1点ずつしかなく、紙質も印刷仕様もさまざま。印刷屋の紙見本ではないかと思われた。
その中で1枚、金箔エンボス印刷の、名刺らしきものを発見。
“Cécil”
セシル、という名前だけが押された、1mmほどの厚みのカード。
19世紀末から20世紀初頭ごろのもので、ファーストネーム以外の情報がない、ミステリアスな名刺である。
書体が骨太でフランスらしからぬ雰囲気なのも、オツ(おそらく当時は、エンボス加工できるような太い文字といえば、このドイツ系の書体しかなかったのだろう)。
裏側の陰影も味わい深い。